DX推進・AI活用・業務自動化など、自社で培った実践知を武器に、企業の成長支援を行うコンサルティングファーム、株式会社renue(設立:2021年 / 本社:東京都港区東新橋)。自社開発の教育システムにより、AIに精通したジェネラリストを育成し、既存の大手ファームとは一線を画すスピードでサービスを提供している。2026年1月には、東京・汐留に新たな拠点を開設。2030年までに、売上高120億円規模への成長目標を掲げている。同社の代表の山本悠介氏は、大手コンサルティングファームの出身である。しかし、もともとITコンサルタントを目指していたわけでも、起業を志していたわけでもなかったそうだ。いったい過去のどのような巡り合せが、彼を現在のキャリアへと導いたのだろうか。また、同社と既存のコンサルティングファームとの具体的な違いとは何なのだろうか。本稿では、山本社長の人生ヒストリーを遡りながら、その答えを明らかにしていきたい。

AI・先端領域に特化した、新時代のコンサルティングファーム

株式会社renue (リノイ) 代表取締役 山本 悠介さん私たちは、企業向けにITコンサルティングサービスを提供している会社です。DXツール/パッケージの開発・導入および、顧客サービス(FDE、コンサルティング、内製化支援)の2軸によって、お客様のDX実装と内製化までを一気通貫で支援しています。2022年からは、AIの急速な進化に応じて当社も事業の再定義を行い、AI・先端領域に特化したコンサルティングファームへと舵を切りました。私たちが目指すのは、テクノロジーの力で単純作業を自動化し、人間にしかできない創造的な仕事に集中できる世界を実現すること。AIの活用により、人間が生み出す付加価値を最大化させることで、企業の成長を支援し、ひいては日本経済を強く豊かにしていきたいと考えています。

※FDE(Forward Deployed Engineer):現場に入り、要件整理から実装・運用までデリバリーを担う実装型支援

まず自分たちをDXし、成果の型を届ける

私たちの強みは、圧倒的なスピードと実装力にあると思っています。それが実現できるのは、自分たちをDXし、人間にしかできない“価値創造”に集中できる環境づくりを、まずは自社で徹底しているからです。当社では、プロジェクト管理、会議・議事録、採用・人事労務、財務・経理、日報・勤怠、マーケティング、PR・広報など、あらゆる業務領域にAIエージェントが浸透しています。単にAIを“使う”のではなく、定型業務のほぼ100%をAIで自動化できる状態にまで実装しているのです。顧客に対してDX支援を行っている企業が、自社の業務はアナログなまま…そのような事例は、実は少なくありません。一方で、バックオフィス業務の約9割をAIエージェントが担っている当社では、AI活用の実践知をリアルタイムで更新しています。だからこそ、顧客課題に応じた成果の型を、圧倒的なスピードで提供できるのです。現在、中小・ベンチャー企業から売上1兆円規模の大手企業まで、さまざまなお客様にお取引をいただいています。

京都生まれ、幼い頃から活字に親しんで育つ

生まれは京都市西南部に位置する、西京区(にしきょうく)と呼ばれる地域です。界隈で有名な観光地といえば、嵐山や苔寺など。私は市の中心部から少し離れた自然豊かなエリアのニュータウンで育ちました。家族は両親と2歳上の姉が1人。子ども時代はゲームも人並みにはやりましたが、あえて周囲と異なる点を挙げるなら、いつも本に囲まれていたことでしょうか。父は大手企業の会社員、母は神戸に由縁のある寺院の生まれでした。そのせいもあって、私たち姉弟は物心がついた頃から、仏教の経典や歴史小説など、あらゆるジャンルの本に囲まれて育ったのです。小学1年生の頃には『シャーロック・ホームズ』シリーズを、小学4年生の頃には司馬遼太郎の歴史小説なんかを読んでいました。難しい本に挑戦すると、大人が褒めてくれるんですよね。正直に言えば、やはり漫画のほうが面白いと思っていました(笑)。

成績優秀なのに、行ける高校がない

中学生くらいまでは、テスト前に少し勉強すれば、どの教科も満点を取れていました。もともと勉強は得意だったのです。一方で、高校受験には苦労しています。なぜなら、授業・生活態度の評価が低かったから。別にグレていたわけではなく、授業中に寝ていたり、ときにはサボったり…単純に不真面目な生徒だったのです。そのせいで内申点が悪かった私は、受験できる高校が限られていました。幸運にも、内申点を問わない公立の進学校が地元に1校だけあり、筆記試験で無事に合格することができました。

成績不振、親泣かせだった高校時代

高校時代の成績は、常に学年でビリを争うような体たらく。相変わらず、授業は寝たりサボったりでした。進学校なので、私のような不真面目な生徒は先生方にも嫌われます。ある夏休み、親には学校の夏期講習に出かけるフリをして、実は友達と遊んでいました。そんな日が続いた挙句、ついに担任の先生から自宅に激怒の電話が…。公立高校ですから、夏休みの講習は表向きには出欠自由なのですが、実際に欠席する生徒など居ないわけです。一方で、ひねくれ者の私は平気でサボっていたんですね。「やる気がないなら退学しなさい!」…当時は似たようなことを繰り返しては、先生方を怒らせていました。何度か保護者面談にもなりましたし、親には心配をかけたと思います。

高校3年生、本気の受験勉強で成績が急上昇!

初めて勉強に本腰を入れたのは、高校3年生になってから。受験を目前にして、ようやくスイッチが入ったのです。最初に取り組んだのは、教材に関する情報収集でした。当時はまだ、日本でAmazonが普及する以前。私はネット上の掲示板などに投稿された教材のレビューを収集し、高評価の参考書を探しました。1週間ほどかけて、全教科のベスト参考書をリスト化したのです。いま思えば、既存の教科書には日頃から課題を感じていたし、受験に勝つための“最善”を自分なりに考えての行動だったのでしょう。あとはリストの片っ端から1冊ずつ消化していくのみ。人生で初めて、1日15時間ほど勉強しました。授業や学校行事は相変わらずサボりがちでしたが、それまで私に怒り心頭だった先生方も、自力では解けない問題があると丁寧に教えてくれました。さて、受験勉強を始めてから約3ヵ月後、模試の結果は京大合格圏内に!かつての私は学年のクラス分けでも底辺グループの常連だったので、自他ともに驚きの成長率でした。やればやるだけ成績が伸びる…!得意分野にコミットし、成果を上げることの面白さを知ったのは、このときが初めてでした。過去にも中学ではバスケ部に入ったり、高校でもバンド活動をやったりしましたが、そこまで没頭できるものはなかったのです。

第一志望大学に合格するも、専攻のミスマッチに気づく

京大工学部の専攻に明確な目的はなく、就職のしやすさや周囲の大人の意見を聞いて、漠然と選んだ進路でした。しかし、入学後に気づいたのは、自分にとって驚くほど興味の持てない分野だったこと!自動車、機械、ガンダムなど、周囲はいかにも工学部らしい話題で盛り上がっていました。一方の私には、共感できる部分が全然なかったのです。クルマなんて、未だに車名を聞いても見分けがつかないレベルですから…。入学当初から、私は学部内で完全に浮いていました。

私生活は、まるで絵に描いたようなダメ京大生!京大には、「吉田寮」に代表されるような古い学生寮があり、そこでは昔から、学生たちによる独特の文化が根づいています。政治や哲学、芸術に関する議論の場でもありますが、しょうもない京大生たちの“たまり場”と表現したほうが正確かもしれません(笑)。私自身も例にもれず、友人たちの寮に入り浸り、酒と麻雀に明け暮れては、大学の講義を寝過ごしてばかりいました。

東大文学部を受験し合格、京大工学部を中退

株式会社renue (リノイ) 代表取締役 山本 悠介さんそもそも専攻に興味が持てないうえに、このまま京大で自堕落な生活を続けていたらダメ人間になってしまう…当時はそんな危機感もありました。そこで、2年生の夏には休学し、東大への再受験を決意したのです。結果的に文学部に合格したので、京大を中退しました。このとき自分の意思で選んだ進路は、言語文化学科ドイツ文学専攻。その当時、ドイツ人作家の小説や哲学書を好んで読んでいたのです。将来の就職を考えたら、工学部よりも圧倒的に不利な選択でした。しかし、今回ばかりは理屈ではなく、直感に従うことにしたのです。自分の得意科目や将来性を考慮して理系を専攻した結果、まったく性に合わないことがわかった。それならば、経済性や実用性はひとまず脇に置いて、本当に興味が持てる分野を追求しようと思ったのです。卒業以来、ドイツ語も文学の知識も活かされる機会はありませんが、学生時代にしか出来ないことをやり尽くした感があるので、今となっては良い選択だったと思っています。

バックパックを背負って、世界40ヵ国超の旅へ

株式会社renue (リノイ) 代表取締役 山本 悠介さん学生時代は、長期休暇のたびに友人とバックパッカーの旅に出かけていました。訪れたのは、アジアやヨーロッパ、南米など、世界40ヵ国超。特に印象に残っているのは、中央アジアの旧ソ連国、ウズベキスタンでしょうか。シルクロードをバスやタクシー、ヒッチハイクで辿る過程で、数日間だけ滞在した国でした。当時のウズベキスタンでは、見るものすべてに驚かされたものです。たとえば、入国手続き時の出来事。定時を迎えた瞬間に、税関に並ぶ我々の行列を放置したまま、現地スタッフが一斉に帰ってしまったのです(笑)。そこからは入国フリーになるわけですが、すかさず警察官が現れて、私たちに賄賂を求めてきます。要は職権を濫用した脅迫なんですね。現地通貨への両替も、交渉相手や賄賂次第でレートはバラバラ。さらに交通手段に至っては、一般人が勝手に“バス”を名乗ってミニバンで営業しているのです(笑)。そのような車に乗った先で、金品を目当てに命の危険に晒されるという修羅場も経験しました。とにかくあらゆる物事が、日本の常識ではあり得ないことばかりでした。旅を通じて、過去の自分が知り得なかった人々の生活や価値観に触れ、視野を大きく拡げることができたと思います。

大苦戦の就職活動、約50社の選考に落ちる

学生時代に起業志向は一切なく、国内メーカーなどへの就職を望んでいました。しかし、約50社に及ぶ日系企業にエントリーするも、結果は不採用!“東大卒”の肩書など、まったく通用しませんでした。そんな私に声をかけてくださったのが、当時のアクセンチュアにいた大学の先輩でした。外資系コンサルティングファームへの就職など、それまで考えたこともありませんでした。むしろ当時は、いわゆる“意識高い系”の集団として敬遠していたほどです。とはいえ、内定ゼロの私には他に選択肢がありません。当時のアクセンチュアだけが、私に内定を出してくれた唯一の会社だったのです。

アクセンチュアにて、金融・ITのコンサルティング業務に従事する

株式会社renue (リノイ) 代表取締役 山本 悠介さん私が新入社員の頃はまだ、“働き方改革”のような概念が世間に生まれる前。アクセンチュアで過ごした3年間は、非常にタフな労働環境でした。肉体的にも精神的にもハードな毎日ではありましたが、この時期に叩き込まれた職業人としての基礎や価値観が、確実に今の自分の財産になっています。特に印象に残っているのは、新人時代に最初に任された仕事が、いわゆる単純作業ばかりだったこと。誰にでもできるような雑用が続き、当時の私は卑屈な感情を抱いたものです。しかし、あの頃の自分には、真の意味での顧客視点が欠けていました。大切なのは、自身の意向に関係なく、それが本当に顧客の役に立つのかどうかという視点。お客様への貢献なくして、どんな立派な学歴も肩書も価値はないのです。そのようなプロフェッショナリズムが若いうちに身についたのは、常に自己の価値を問われ続けるアクセンチュアの厳しい環境があったからだと思います。メール一つ、資料一つにおいても、句読点や改行など、細部にわたるまで品質を追求する姿勢は、あらゆる局面で“隙のない仕事”へと繋がっていくものです。初めての就職先がアクセンチュアだったことで、仕事に対する基準値を高めることができました。

ベンチャー企業の経営に携わり、人材育成への興味が生まれる

入社当初はまったく社内評価を得られなかった自分が、昇進という形で一定の成果を残せたこと。また、アクセンチュアのように完成されたシステムの一員としてではなく、自らの手でビジネスの仕組みを創りたかったこと。起業した友人から経営幹部に誘われたこと。アクセンチュアを辞めたのは、さまざまな要因が重なったタイミングでした。

退職後はベンチャー企業の経営に参画したことで、人材育成の面白さに初めて気がつきました。後にフリーランスも経験しましたが、やはり一人で出来ることには限界があります。時給にして約3万円、年収4,000万円近くを稼げるようになっても、あくまで時間の切り売りでしかないのです。組織をつくってメンバーの成長を支援し、人の能力を最大化させる仕組みを築くこと。仲間と共に、お客様への貢献の幅を拡げていける喜び。それこそが、人生を懸けるに値する意義のある仕事だと思うようになりました。

紆余曲折の末、2021年に株式会社renueを設立

株式会社renue (リノイ) 代表取締役 山本 悠介さん自らの手で事業を創りたい…そのような理由でアクセンチュアを辞めたわけですが、その時点では起業をしたり、自分が代表になったりする必要はないと思っていました。だからこそ友人が立ち上げたベンチャー企業に参画するなど、他者と組んで事業を創るために試行錯誤を重ねていたのです。しかし、最終的に辿り着いたのは、「自分で起業するしかない」という答えでした。私の場合、最初から起業志向があったのではなく、やりたいことを実現するために残された選択肢が、もはや起業しかなかったのです。

「ChatGPT」の登場を機に、AIを前提にしたビジネスモデルへ転換する

創業当初と現在では、事業内容が大きく変わっています。設立から数年間は、コンサルティング業務を手がける一方で、会社の方向性を模索していました。というのも、従来のコンサルティングファームのビジネスモデルに課題を感じていたからです。その一つが、会社としてのアセットが蓄積しにくい構造であること。コンサルティングファームにとっての最大の資産は「人」なのですが、優秀な人材ほど転職が容易なため、スキルやノウハウなどの資産がストックされにくいという構造的なジレンマがあります。だからこそ、当時はSaaSの開発なども並行していたのですが、いずれはソフトウェア自体がアセットとして成立し得なくなる時代が来るとも感じていたのです。

転機が訪れたのは2022年。「ChatGPT」の登場により、時代の潮目が明らかに変わりました。AIの進化が、組織のあり方そのものを根本から変える!―― そう確信したのです。もちろんコンサルティング業界も例外ではありません。これまで大手のファームが巨大組織で抱えていた業務は、その多くがAIに代替されていく…。しかし翻せば、AIを前提にビジネスモデルを再設計することで、従来よりも圧倒的に少数組織で、同等以上の価値を生み出せる時代が来たことを意味していたのです。このときの直感が、それまでの試行錯誤に区切りを付け、AI・先端領域に特化したコンサルティングファームへと完全に移行する契機となりました。

成果報酬型の契約形態で、顧客と共に勝つ

コンサルティング業界のビジネスモデルに対する私の課題意識は、その契約形態にもありました。一般的にコンサルティング業は人月商売です。稼働人数と稼働月数で売上が決まる構造になっており、報酬は成果と関係なく契約通りに支払われます。つまり、コンサル側にとっては長期の大型契約を獲得すること、またその契約を継続させることにインセンティブが働きやすい構造になっており、実際にそのような契約を獲得できる人材が社内で高く評価される傾向にあります。私はアクセンチュアにいた頃から、そこに疑問を感じていたのです。売る人ではなく、デリバリーする人(受注したプロジェクトを遂行し、成果物をクライアントに届ける人)が、もっと高く評価されるべきではないか。私たちが提供する価値の本質は、実際に手を動かして顧客課題を解決すること(成果)にあるはずです。だから当社では、レベニューシェアや顧客利益からの報酬計算など、成果報酬型の契約形態を採用しています。成果がなければ、報酬もない。一般的な契約形態よりもリスクを伴いますが、だからこそ成果に本気でこだわり、お客様に本質的な価値を提供できるのです。コンサルだけが儲かるのではなく、顧客と共に勝てるようなビジネスの仕組みを自らの手で創りたい…これは私がアクセンチュア時代から温めてきた想いであり、renue創業の原点なのです。

覚悟のコンサルモデルを日本に定着させ、ゆくゆくはアジアへ

株式会社renue (リノイ) 代表取締役 山本 悠介さんコンサルティング業界が、年々ダサくなってきている…言葉を選ばずに表現させていただくと、私には昨今の業界に対して、そのような印象を受けることが増えてきました。私がアクセンチュアに入社した頃は、若くして大企業の役員と渡り合うような気骨のある先輩たちの姿に憧れたものです。ところが、昨今の業界の実態といえば、クライアントの企業活動に伴うルーティンワークを代替するだけの派遣業のように見える節があります。そうなってしまった原因には、クライアント側(主に日本企業)にも責任があると思っています。その一つが、自社の改革であるにも関わらず、発注主である企業が責任を回避するため、プロジェクトを外部の人間に丸投げしてきたこと。当たり前の話ですが、新規事業の立ち上げもDXの推進も、社外の誰かがやってくれるものではありません。自らの責任でプロジェクトを進める覚悟が企業側にあれば、外部への丸投げなど起こり得ないし、発注先に対しても成果を問う意識が生まれるはずです。だからこそ私たちは、成果報酬モデルで自社がリスクを取る代わりに、クライアントにも相当の覚悟を求めます。契約時点で、互いのコミットメントを握り合うのです。パートナーとして共にリスクを負い、本質的な変革に挑む。このようなコンサルモデルを成功させることで、私たちは日本における発注者側の意識を変えていきたい。企業が変革に対する覚悟を持ち、パートナー選びに真剣になれば、いずれコンサルティング業界も変わっていくはずです。とはいえ、私たちにとって今はまだ開拓期。他社が見積りの検討で停まっている間に、成果報酬型の当社が圧倒的なスピードで価値を提供していく。その蓄積を通じて、日本に新しいコンサルモデルを定着させていきたいと思っています。長期的な目標に掲げているのは、日本と同じく欧米の商習慣に染まったアジア全体のコンサルモデルを、成果報酬型へと塗り替えていくこと。顧客と共にゴールに向かって全力で取り組んだ先にある達成感は、何物にも代えられません。自ら変革の意志を持ち、リスクを取る気概と意欲のあるお客様と、力強く成長していきたいと思っています。

 

◆ 編集後記 ◆

「AIが人間の仕事を奪う」―― 世間でそう言われるようになって久しい。特に「ChatGPT」の登場以降は、筆者のようにテクノロジーに疎い人間でも、そのような未来が間近に迫っていることをリアルに実感するようになった。特にライターなど、AIに代替されていく代表的な職業であることは、もはや自覚せざるを得ない。同様に、従来のコンサルタントが顧客に提供してきたサービスの価格も、多くの業務がAIに代替されることで、これまで顧客にコンサルタント一人あたり約2万円を請求してきた時給が、今や1,000円程度にまで下がり得る世界が来ていると知り、思わず戦慄を覚えた。

では、AIの進化がますます加速していく社会において、人間にしか提供できない価値とは何だろうか。それは、AIが持ち得ない“身体性”や“熱意”である。株式会社renueのWebサイトの「採用情報」のページに、同社が求める人材の資質(心・技・体)についての記載がある。筆者にとって特に印象的だったのは、「心(お客様以上の熱意)」「技(AIのマネジメントをこなせる技術)」「体(AIに付き合う体力・好感のある美容」という文言だった。一見すると意外性があるが、同社について理解を深めるうちに、ようやく腑に落とすことができた。同社が提供するサービスは、顧客と共にリスクを負って本質的な変革に挑む、成果報酬モデルである。たとえどんなにAIが進化しても、人を巻き込み物事を動かすこと、最終的な責任を取ることは、結局は人間にしかできないのだ。顧客とリスクを分かち合い、成果にコミットするには胆力が要る。顧客が判断を誤りそうになったとき、毅然として「NO」と伝えるには信念が要る。だからこそ、同社では教育システムやバックオフィス業務を徹底的に効率化する一方で、顧客の成功に対して熱意を持ち、その想いを声や表情で届けるための訓練を怠らない。それは会議前の発声練習であったり、健康管理のためのジムの費用補助であったり。AI時代において、人間だからこそ生まれる信頼を育むための投資や教育を惜しまないのだ。ちなみに山本社長ご自身も、ソフトマッチョかつ美肌である。各種メディアにおいても、臆せず鋭い本質を突く山本社長が率いる同社は、業界において強烈な個性を放っている。コンサルタントを目指していたわけでも、起業を志していたわけでもなかった彼が今、コンサルティング業界を変えるという大きな野望を抱いている。同社の今後の発展が、非常に楽しみである。

取材:四分一 武 / 文:アラミホ

メールマガジン配信日: 2026年6月1日