ECサイトで商品をみてまわっても、なぜか買わない人がいる。彼等を購買につなげるにはどうしたらいいのか。事業担当者なら必ずぶつかるこの壁を乗り越えるために、多角的なアプローチを提案する株式会社 Socket。まだ若い会社だが、精鋭揃いのメンバーがこれから次々と新しい事業を立ち上げようとしている。優秀な人材が集まり、心地よいコラボレーションを可能にしているものは? 代表の安藤氏にお話をうかがった。

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転校の連続が、人と打ち解けるスピードを磨いた

安藤氏は1981年、長崎県平戸市で生まれた。専売公社(現在の日本たばこ)に勤めていた父は転勤族。6歳になるまでは毎年引越しがあったほど、変 化の激しい環境で育った。まわりと仲良くなっても、またすぐ別れがやってくる。それなら友達とは早く親しくなったほうが一緒に過ごせる時間が増えると悟っ た安藤氏は、小さい頃から人と打ち解けるスピードが速かったという。小学4年までは綾瀬市で過ごした。その後、海外転勤が決まった父に連れられ、米国に移 り住むこととなった。

どこまでも青い空、からっとした空気。年間10日ほどしか雨が降らないサンディエゴで10歳からの3年間を過ごした。平日は現地の学校に通い、土曜 日は帰国後に備える日本人学校へ。週末になると、日本人の子どもたちと家族ぐるみで楽しんだ。「サンディエゴは雨が殆ど降らず、暖かいので凍死の心配がな い。最悪屋外で寝てても生きていけるとなると、人間が適当になるんです。私もずいぶん楽観的になりました(笑)」

柔道にのめりこんだ中高時代。武道がもつ「単純さ」に惹かれた

中学1年生のときにサンディエゴから帰国、家族は綾瀬に戻った。当時の綾瀬は若者が荒れていたため、サンディエゴから戻ったばかりの安藤氏は、転入 先の中学校で同級生からボコボコにされた。負けた悔しさと強くなりたいという想いが募った。「強くなれるならなんでもいいと思って(笑)喧嘩相手は柔道 やってたんです。そこで私も迷わず柔道部に入りました。米国生活を通じて自分のアイデンティティを見失いそうになっていましたが、練習すればするだけ上達 する、武道がもつ単純さに安心を感じたのをおぼえています。相手との間合いや境界を意識する柔道を通じて、自分を再確認することができました」

高校受験は帰国子女枠がある成蹊を受けたところ、即合格。安藤氏は他の志望校の受験を止めて成蹊に決めた。毎朝4:30に起床、朝練を含む柔道部の 練習に没頭する3年間を過ごした。両親はそのまま成蹊大学に進学すると思っていたが、安藤氏はなんと消防士への道を選んだ。「どうしても4年間大学に通う メリットが理解できなかった。それよりも早く自立したいと思ったんです。もちろん母には猛烈に反対されました」

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消防士としての活躍を経てから、大学で学ぶ道を選んだ

仕事で自立しながら柔道を続けたかった安藤氏にとって、消防士は日常的に身体を鍛えられる理想の仕事だった。消防学校で半年学び、その後成績上位者 として三鷹勤務が決定した。体力に自信があった安藤氏でも、消防士としての24時間勤務は当初髪が抜け落ちるほどきつかったという。同期は大卒が殆どで、 高卒は1800人中10人。最初の1週間で10%が辞めていくほど過酷だった。そんな中、安藤氏はたたき上げの中卒ベテラン教官に「お前は俺が育てる」と 可愛がられる異色の存在だった。

実力を認められて訓練担当にまでなった安藤氏だったが、東大卒の新人が現場を少し体験するだけで本庁勤務になるのをみて「大学は自分を裏付けるベー スのステータスなのか」と感じるようになった。消防士として三年間を過ごすうちに、安藤氏の中で大学に行きたいという意欲が大きくなっていった。改めて大 学で学ぶと決めた安藤氏は、消防士の経験を活かせる筑波大学体育専門学マネジメント専攻に入学した。

いくつかの事業立ち上げを経て、株式会社Socketを創業

大学では体育経営学や運動生理学を学ぶ傍ら、柔道に比べ競技人口が少なく、大学生から始めても上を狙えるトライアスロンに挑戦。日本ランキング70 位を記録した。その後、就職活動で知り合った事業家を通じて、安藤氏のような体育会系の学生を企業に紹介する「アスリート就職ナビ」に携わった。事業は 2007年末には38000人の学生が登録するまでに成長した。2008年には某上場企業に「アスリート就職ナビ」を売却。その後は主にスポーツ健康分 野・EC分野で国内のみならず、シンガポールや中国で新たに複数の事業を立ち上げた。

そして2012年11月、現在の株式会社Socketを創業した。前職からのつながりで、気心の知れた優秀な仲間と一緒の起業だった。起業からまだ 3年ほどだが、様々な事業の構築に挑戦する中で「flipdesk」というスマートフォンに特化した販促プラットフォームを活用し、ECサイトで顧客を購 買につなげるまでの施策を多くのクライアントに提案している。「まだこれからの会社ですが、いま事業を一緒に創りたい人を集めています。ここにある人脈・ リソースを使っていろんな事業が生まれていくことを期待しています」と安藤氏は語った。

四分一 武 / 文:ぱうだー

メールマガジン配信日: 2015年5月27日