「結婚できない人をゼロに。」というフレーズの広告を、通勤電車の中で目にしたことがある人も多いのではないだろうか。晩婚化・非婚化が進む日本は、まさに結婚しにくい時代に突入している。そんな中、「生涯愛せるパートナーに出会っていただきたい。」という願いを込めて、婚活支援サービスで順調に業績を伸ばしているのが株式会社パートナーエージェントだ。こちらの会社を率いるのが、佐藤茂氏だ。「事業は何のためにあるのか。」と常に問い続ける、佐藤氏にお話をうかがった。

株式会社パートナーエージェント 代表取締役社長 佐藤 茂さん昔から目的と背景を求めるタイプだった

43歳という佐藤氏は、3歳まで世田谷区砧で育った。父は現防衛省勤務の公務員。祖母、母、2人の姉という女系家族の中で少年時代を過ごした。「小さい頃に着ていた洋服は、姉たちのおさがりの女物でした。TVは有無を言わさず姉にチャンネルを変えられて、女の子の番組を一緒に観ていました。女性に囲まれて育ったせいか、まわりには優しい子だと言われていたと思います。」

そんな佐藤氏に転機が訪れたのは高校時代。勉強をする目的がわからなくなり、いい大学に入って、いい会社に入るという世の中のステレオタイプな考え方に反発を感じ 、遊んでばかりいた。そんな佐藤氏をはじめとする不良たちに、本気でぶつかってくれる先生がいた。先生に将来何になりたいのかと聞かれた佐藤氏は、咄嗟に金持ちになりたいと答えた。それを聞いた先生から、「それなら学生なんか辞めてクレーンやブルドーザーの運転手になれば、年収3000万円くらいになるぞ。」と言われてはっとした。「勉強も仕事も同じなのですが、僕は理屈がないと動けないんです。目的と背景がないとやる気がでない。先生の言葉をきっかけに、将来を考えるようになりました。」と佐藤氏は当時を振り返る。

学生らしい遊びは一切せず、働くことを楽しんでいた大学生時代

高校を卒業したら、社会人になって稼ぐか?それとも大学に進学するか? 進路に悩んでいた佐藤氏は、このとき生涯に2回だけという父のアドバイスを受けた。防衛庁でノンキャリアのトップにまで登りつめた父だったが、大卒でない父はそこに至るまでに大変な苦労を重ねたという。そんな父から「大学に行くことで、初めて乗れる土俵もある。」と言われ、佐藤氏は大学進学を選択した。

大学生になった佐藤氏は、勉強に没頭するのかと思いきや、バイトに夢中になったという。大学生らしい遊びには興味はなく、仕事を楽しんだ。「とにかく早く仕事をしたくて仕方ありませんでした。時給がUPすると、自分が認められたようでうれしかったですね。仕事を通して自分の成長を実感する日々を過ごしていました。」こうしているうちに、気付けばサラリーマン並の300~400万の年収を得るようになっていた。そしてこの頃、現在の株式会社オプトとの出会いがあった。

株式会社パートナーエージェント 代表取締役社長 佐藤 茂さん結婚相談所業界との出会い、そして独立へ

大学3年生のときに、現在の株式会社オプトでインターネット広告営業を始めた。会社の成長期と重なり、在籍していた5年半で売上は100万円から30億円に。初期立ち上げメンバーの1人として、後半の2年半はインターネットビジネスの立ち上げに従事した。

2000年4月には株式会社オプトの先輩を手伝う形で、ある結婚相談所のインターネットマーケティングに携わった。営業利益の向上に貢献し、2年目にはなんと常務取締役に抜擢された。このとき仕事を通じて、結婚相談所業界全体の改革が必要なことを痛感したという。

そして2006年4月に株式会社テイクアンドギヴ・ニーズに入社。代表の野尻氏のもとで結婚相談事業の立ち上げに関わった。そして2008年に経営者と従業員で出資をして会社の全株式を買い取る、MEBO(Management Employee Buyout)により独立。これが現在の株式会社パートナーエージェントとなる。「事業がやっとこれからというところで、会社が売られてしまうのはもったいないと思いました。事業を買い取る資金はなんとか捻出しましたが、独立当初の赤字は約1億円。数字をみると死にそうですが、僕はこういうことではあまりつらいと思わない。なんとか乗り切れました。」

株式会社パートナーエージェント 代表取締役社長 佐藤 茂さんマーケットではなく、利用者の満足を拡大したい

そして2015年に株式会社パートナーエージェントは東京証券取引所マザーズへの上場を果たした。現在、成婚率などのデータを外部に積極的に開示し、利用者の満足度を会社の成長につなげようとしている。「いま婚活ビジネスが注目されていますが、独身者というのは限られたマーケットなんですね。僕は無理にマーケットを広げるつもりはありません。あくまでも利用者の満足度を拡げていきたいんです。」と佐藤氏は語る。

「事業は何のためにあるのか。」と問い続ける佐藤氏にとって、社会に貢献することは大切な要素だ。瑞宝章を賜ったという祖母や祖父の影響もあり、佐藤氏もビジネスを通じて日本に貢献したいと考えている。株式会社パートナーエージェントを舞台に日本を変えていく。今後の佐藤氏のチャレンジから目が離せない。

取材: 四分一 武 / 文: ぱうだー

メールマガジン配信日: 2017年1月16日