日本の労働力人口の減少が社会問題となっている。それを解決する鍵として、1人ひとりの労働生産UPのために様々な事業を行っているのが今回訪問した株式会社うるるだ。札幌での創業は2001年。その後順調に成長し、2017年には東証マザーズに上場を果たした。「人のチカラで 世界を便利に」をビジョンに掲げ、会社を率いる代表の星氏にお話をうかがった。

在宅ワーカーを日本の潜在労働力として活用する

株式会社うるる 代表取締役社長 星 知也さん社名の「うるる」は、オーストラリアの中心にある世界最大級の一枚岩、エアーズロックが由来となっている。ここは原住民であるアボリジニたちの聖なる地とされ、原住民語で「うるる」と呼ばれている。うるるはこれまで労働人口としてカウントされなかった主婦を中心に、高齢者や学生、心の病を抱える人や障碍者などに在宅で働けるチャンスを提供することで、日本の労働力向上を目指している。

うるるはビジネスプロセスアウトソーシングを通じて、お客様のビジネスの効率化・合理化を支援するデータ入力のBPOサービスからスタートし、現在様々な事業を手掛けている。在宅ワーカーと企業をマッチングさせるプラットフォーム「シュフティ」には、現在37万人が登録。またうるる主導で在宅ワーカーとプロダクトをつくるCGS事業では、全国の官公庁の入札情報をまとめて提供するNJSSなど、様々な新サービスを展開中だ。

子供のころから自立心が旺盛だった

札幌で生まれた星氏は、小さい頃から自立心が強い子供だった。網走出身、家も自分で作ってしまう独立心旺盛な父の影響が大きかったという。「母親によれば、私も2歳でのこぎりを手にしていたそうです。普通子供にそんな危ないものは持たせないですよね(笑) たとえ危なくても、子供がやりたいことはやらせてみることが大事と考えていたのかもしれませんね」と星氏は当時を振り返る。

自主性が尊重される家庭に育った星氏は、高校のときに母親から「毎月5000円の小遣いか、小遣いはアルバイトで稼ぐか」どちらかを選ぶように言われた。5000円が少ないと感じた星氏は、新聞配達のアルバイトを選んだ。「月2~3万円になるならと思って始めたんですが、冬の間はつらかったですね。というのも配達が始まる朝4時は、除雪車が入ってないんですよ。自分で踏み固めた雪道をカブで進んで新聞を配るような日々でした。たまにすべって新聞を雪道に散乱させることも。いまとなってはいい経験となっており、お金を稼ぐ大変さを学べました」

株式会社うるる 代表取締役社長 星 知也さん枠にとらわれない営業スタイルを模索

勉強が嫌いだったという星氏は、大学に進学せずに働くことを決意。このときも両親は何も言わなかった。「自立したい気持ちが強かったんです。そのために働きたいと思いました。最初の仕事はビルの窓掃除、そのあとスーツを着る仕事にあこがれて営業会社に行きました。就活の実態を知らないので、求人情報誌から選んだ会社で働くことを就活だと思っていました。世間知らずですよね(笑)」と苦笑いをする星氏。

18歳の星氏は、電話機を訪問販売する営業会社で、抜群の成績を収めた。そこでの収入は歩合制。自由に使えるお金があることは、大きな充実感だったという。「決められた売り方に倣うのではなく、自分ならではの売り方を探っていました。昼間は自由に過ごし、夜家の灯りが着く頃に訪問するなど、いろいろ工夫していました。普通の人は、一日100軒訪問して1件受注できるかだったのですが、私の場合は、一日3件だけ訪問して3件受注なんてこともありました。どうやったら効率良く営業できるかを常に考えていると、家を見ただけで受注出来そうかどうかわかることもあったんです(笑)。学校の勉強は嫌いでしたが、社会に出てからはたくさんのことを学びました。何を学ぶのか、それを何で学ぶのか全部自分で決められるのが自分の性に合っていたのかもしれません」

3年が過ぎた頃、千葉の所長になった星氏のもとにオーストラリアでワーキングホリデーを過ごした若者が入社してきた。こんな自由な生き方があるのかと衝撃を受けた星氏は、その日のうちに辞表を出し自らもオーストラリアへ旅立った。「初日の宿泊先も予約せず、持ち物は一泊分の服とわずか10万円のみでした。とにかく行けばなんとかなるだろうと。笑」

自分が自由にやりたいからこそ、人にも仕事を任せる

株式会社うるる 代表取締役社長 星 知也さん1年間のワーキングホリデーでは、様々な出会いを得た。現在うるるの役員の1人は、このときの出会いがきっかけとなっている。帰国後、入社した営業会社で新規事業の立ち上げを経験。そのひとつが現在のうるるだ。あるとき会社が事業を全部たたむと聞き、星氏はうるるをMBOすることを決めた。「当時はBPO事業だけだったのですが、成長を考えるともったいなかったんです。私が買えばリストラの必要もありません。自分で事業をやりたい意思もあり、うるるを譲り受けました」と星氏は当時を振り返る。

2005年のこの出来事を第二創業と位置付けるうるるは、その後も掲げたビジョンの達成のために様々な事業を展開し、現在に至る。「社員は家族だと思っています。いざとなれば自分が営業すればいいという自信があるので、まわりの人に仕事を任せることができています。人に仕事を任せるのは、自分が任されたいからなんです。昔からそうなんですが、なぜそうするのか、何がゴールなのか、納得した仕事がしたい。だからこそ社員にもそれを示すことで、自分の判断で動いてもらうスタイルをとっています」

星氏は「世の中に必要とされるサービスを提供することが、自らの使命であり存在意義」と語る。顧客だけでなく、その仕事をする在宅ワーカー、そしてそこで生まれるプロダクトを使うユーザー。様々な立場の人にとっての存在意義を模索しているうるるの今後のビジネスに期待したい。

取材: 四分一 武 / 文: ぱうだー

メールマガジン配信日: 2018年3月5日