株式会社創英コーポレーション(本社:横浜ランドマークタワー42階)は、小学生から高校生までを対象とした個別指導塾「創英ゼミナール」を、東京・神奈川エリアを中心に展開している。同塾は、生徒数・校舎数ともに業界屈指の急成長を遂げており、創業以来22期連続の増収増益を実現している。校舎数は現在130校に達しており、これまで撤退した校舎は一つもない。学習塾の激戦区において、「創英ゼミナール」が生徒や保護者からの圧倒的な支持を得ている要因は、いったいどこにあるのだろうか。本稿では、創業者である豊川氏のユニークなご経歴をはじめ、創業時のエピソード、生徒の教育や社員の育成に関する彼ならではの哲学にも触れていきたい。

株式会社創英コーポレーション 代表取締役 豊川 忠紀さん神奈川県最多!直営個別指導塾「創英ゼミナール」を運営。

当社はグループ会社を含めて、9つの教育ビジネスを展開しています。中核事業の個別指導塾「創英ゼミナール」は、東京・神奈川エリアを中心に130校舎を展開しており、小学生から高校生まで、約1万人の生徒様にご利用いただいています。その他、合格実績日本一の「東進衛星予備校」を神奈川県内に25校舎、FC本部として「個別学習セルモ」を全国に110教室展開しており、更にオールイングリッシュ幼稚舎「Nobil Kids」、43ヵ国語に対応できる「ワールド外語学院」、学童保育や企業主導型保育、最近では、台湾での日本語教室やオーストラリアでの留学事業など、社員の声から生まれた事業部やグループ会社も誕生しました。

第一志望校合格率90%超!受験指導の実績とノウハウが豊富。

首都圏最大級の校舎数を運営してきた私たちには、21年間で約15万人に上る生徒の指導実績があります。培ってきた指導ノウハウは、すべての社員・校舎で共有されています。それこそが直営の魅力と考えるからです。
「一人ひとり主義」をコンセプトとする創英ゼミナールの授業はもちろん完全個別。生徒のわからないところを見逃さず、しっかりと理解・定着するまで指導しています。地域密着型の校舎展開にて各学校別の情報量を豊富に持つため、効果的な学習やテスト対策には定評をいただいています。それが毎年90%以上の生徒が第一志望校に合格している秘訣とも言えます。おかげさまでコロナ禍においても、校舎数・生徒数ともに成長を続けてきました。

脱Only受験!成績アップや志望校合格は、あくまで手段。

第一志望校合格率90%超を誇り、テレビの報道番組において入試特番も担当している当社ですが、コンセプトは「脱Only受験」。志望校合格だけがゴールではなく、その先の未来を充実させるために、生徒の主体性や計画力、課題解決力などを、受験勉強を通して育むことを目指しています。卒業生には、合格後も、社会に出てからも、自己実現に向けて自らアクションを起こせるような人材になって欲しいと考えています。

「勉強」よりも「挨拶」に厳しい家庭で育った。

私の生まれは神奈川県茅ヶ崎市、桑田佳祐さんと同じ小・中学校を卒業しました。実家は地元の繁華街にあり、かつては両親が小さな飲食店を営んでいました。特に裕福な家庭ではありませんが、2歳下の弟と共に、何不自由なく育ててもらいました。幼い頃の私は、「挨拶ができる子」として近所の大人からよく褒められました。人に会ったら大きな声で挨拶をするよう、父に教育されていたからです。一方で、「勉強しなさい」と両親に言われたことは一度もありませんでした。成績や進学について、とやかく言うような家庭ではなかったですね。

自分の意志で学習塾に通い、中学受験にトライする。

子ども時代の私は、勉強・スポーツのいずれにおいても、順位でいえばクラスの真ん中から上くらいでした。小学生の頃は、近所の公文教室に通っていました。計算が早いだけで目立つ存在になれましたし、友達が公文教室に楽しそうに通っている姿を見て、自然と興味を持ったのです。一方で、学習塾には誰もが通うような時代ではありませんでした。当時はまだ、女子ならピアノ、男子なら野球、それ以外はスイミングや書道、そろばん、あたりが一般的な小学生の習い事でした。そんなある日のことです。学習塾に通っているクラスメートが、担任の先生から叱責される事件が起こりました。その当時、塾に通っていたのはクラスの中で3名のみ。彼らは教室で挙手をさせられ、「まったく塾なんてところは…!」と、先生から説教を受ける事態になったのです。ところが…私の目にはその3人が、ある種の憧れの対象として映りました。少なくとも彼らは、私よりもずっと多くのことを知っているように見えたからです。そんな好奇心から、私は両親を説得して、彼らが通っていた塾(現在の「日能研」)に入りました。入試までを考えるとごく短い期間でしたが、私は他の生徒と同様、中学受験を志したのです。とはいえ、両親はそもそも私に中学受験をさせるつもりなど毛頭なかったので、出願を許されたのは志望校1校のみ。そしてやはりと言うべきか、結果は不合格となり、地元の公立中学校に入学しました。

進学校に入学するも、完全ノー勉強だった高校時代。

合格こそ果たせなかったものの、私には受験勉強のおかげで蓄積がありました。少々サボっていても、中学校の成績は「オール4」程度なら普通にキープすることができました。地元の塾には通ってはいましたが、実際の目的は勉強ではなく、塾を口実にすれば、夜に友達と外出できるから入塾したようなものです。もしも中学3年間で、地道に努力する習慣がついていたら、私の未来は変わったかもしれません。しかし…高校生になった頃には少々のサボりどころか、生活の中に「勉強」の2文字がすっかり消えていました。3年間で教科書を一冊も買わなかったのですから、どれだけ勉強しなかったかはお察しいただけると思います(笑)。

株式会社創英コーポレーション 代表取締役 豊川 忠紀さん若さと好奇心のままに、バイトも遊びも全力!

高校時代、勉強そっちのけで熱中したのがアルバイトでした。人生初のバイトは15歳、「ファーストキッチン」でハンバーガーを作る仕事でした。「豊川くん、キミ使えるねぇ~!」…これは入店してまもない頃、現場でせっせと働く私に、店長やマネージャーがくれた言葉です。いま思えば、仕事自体は誰でもできるような単純作業ですし、そもそも人に対して「使える」なんて酷い表現ですよね(笑)。しかし、当時の私にとっては、それが最高の誉め言葉でした。なんだか自分が一人前の大人として認められたようで、すごく嬉しかったのです。お金を稼げることはもちろん、店で過ごす時間そのものが楽しくて、夢中になって働きました。海水浴場にある店舗だったので、夏は鬼のように忙しいわけです。朝から晩まで殺到する注文を、仲間とヘロヘロになって捌いていると、あっという間に時間が過ぎました。とにかく仕事はスピード命!当時は両手に卵を2個ずつ持って、同時に割るスキルを心得ていました(笑)。若かったので、遊びだって全力です。夏休みには、毎週のように東京の繁華街やディスコで夜まで遊び、翌日も早朝には海水浴場で働いていました。バブルの末期だったせいか、当時は大人たちが自由で輝いて見えました。自分も早く大人になって、彼らの世界を同じように体験してみたい…!そんな調子で好奇心の赴くまま、果敢に経験値の幅を拡げていきました。たとえば、仲間と一晩中派手に遊んでみたり、サーフィンやキャンプに興じてみたり、アイドルの追っかけをしている友達を冷やかしに行ったり…(笑)。遊ぶお金欲しさに高校生であることも忘れ猛烈に働いていたので、バイクもクルマも持っていました。そういう時代だったとも言えるかもしれませんが。

自由な校風に助けられ、無事に高校を卒業する。

私にとっての高校3年間は、刺激的な出逢いや経験に満ちた、非常に充実した日々でした。一方で、寝る間を惜しんでバイトや遊びに明け暮れていたので、当然ながら勉強など一切していません。一限目の授業は大抵サボっていたし、規定の出席日数さえ満たしていませんでした。ただ、通っていたのは進学校ではありながら、かなり自由な校風だったので、最終的には課題の提出を条件に卒業を認めてもらえたのです(それさえ友達にお願いしたような記憶が…)。そんな私には当然、行ける大学などありませんでした。それでも就職したいわけではなかったので、一応は受験もしました。結果にはまったく手応えがなく、合格発表を見に行くことさえしませんでした。

約50種類の職業を経験。将来はダンプカーに乗るつもりだった。

高校卒業後は浪人する予定でしたが、気づけば勉強を放り出し、フリーター生活に移行していました。高校時代のアルバイトから数えると、私が経験した仕事は約50種類に上ります。遊び盛りだったので稼ぎたいと思っていたし、好奇心の赴くままにいろんな仕事にトライしました。アパレル、飲食店、スーパー、トラックドライバー、ガソリンスタンド等をはじめ、さまざまな仕事に就いたことは、自分の興味や適性を知るうえで有効だったと思います。

20歳になる頃は、将来はダンプカーに乗るつもりでした。当時の私が知る限り、ダンプのドライバーが最も稼げる職業でしたし、地元で「イケてる大人」といえば、やはりダンプに乗っている先輩の顔が浮かびました。自分が乗るなら「紫」にしようと、車体の色まで決めていたものです(笑)。当時は若かったこともあり、仕事を選ぶ基準といえば「将来性」よりも目の前の「お金」でした。ちゃんと将来を考えなさい…!大人がよく言うこのセリフに、当時の私は反発心を抱いていました。今この瞬間が楽しいのに、なぜ「将来のため」に、「今を犠牲」にする必要があるのか…?とはいえ、自分が仕事に求めるものは、自ずと変わっていきました。遊んでないで勉強しなさい!…そう言われる子どもと同じですね。遊び尽くせばそのうち飽きますし、動機さえ見つければ自ずと勉強するようになるのです。トラックドライバーの先輩たちには、仕事自体に楽しみを見出す人は居ませんでした。その点、好奇心・成長意欲ともに旺盛だった20代の私には、いま一つ刺激に欠ける環境でした。

フルコミッションの営業に挑戦し、20代半ばでトップセールスマンに。

いろんな仕事を経験するなかで、「すごい大人たち」にも出逢いました。たとえば私が住宅関連の営業をしていた頃、明らかに突出した成果を出している同僚がいました。同世代ながら、私には到底できないような数字を毎月達成しているのです。成果を出すには「考え方」や「計画性」が大事だよ。…先輩からのアドバイスを、当初の私は素直に受け入れませんでした。そんなものは関係ない!気合いと根性さえあれば、成功できると思っていたのです(笑)。ところが…デキる人の神業を見せられたら、自分の仕事を見直すしかありません。たとえば、営業に同行した際のこと。お客様への提案を始めた時点で、早々に見込みがないと判断した私に、先輩がふと目配せをしました。そして、見事に契約を決めてしまったのです。絶対に買わない相手だと思ったのに…!自分に見えている世界だけがすべてではないと、このとき身をもって知りました。

そんな私も20代の半ば頃には、それなりの営業成果が出せるようになっていました。フルコミッションの営業で運良く年収が1,500万円を超えたこともあります。もちろん、同世代の中で最も稼ぐわけですから、もはや天狗になっていましたね。「俺、わかっちゃった♪」…なんて勘違いしていたことが、今となっては恥ずかしい限りです(笑)。

営業職の仕事は、個人の成績がグラフで毎月公開されます。そうなると、やはり同僚には負けたくない。ちょっとサボると焦燥感に駆られて、締切まで必死になって辻褄を合わせるわけです。しかし、どんなに大きな数字を達成しても、翌月にはまたゼロからのスタート。まるで走り続けるハムスターのように、このレースを永遠に繰り返すわけです。こんな日々がずっと続くなんて、さすがにキツイよなぁ…。現状の気力や体力が永遠に続くとも思えず、徐々に次のステップを考え始めました。

株式会社創英コーポレーション 代表取締役 豊川 忠紀さん20代で「死」の恐怖に向き合った、人生最大の転機。

20代の後半に、私は予期せぬ災難に見舞われました。1つ目はクルマの助手席に座っていた際に、交通事故に巻き込まれてケガをしたこと。もう一つは、健康診断で大腸に異常が見つかったことでした。特に大腸の病変については、発覚したその日から約2ヵ月間の緊急入院を要するほどの病状でした。人生で初めて、自分が死ぬかもしれないという恐怖に直面したのです。あのとき病院を抜け出し、思わず買った「遺書の書き方」に関する本は、今でも私の書棚に残っています。

幸運にも、私は無事に生き延びることができました。思えば病気が発覚したとき、まるで自分に天罰が下ったかのような感覚でした。過去の自分の行いや過ちへの報いが、病気として現れたのではないかと思ったのです。せっかく治ったのだから、それまでの生き方や価値観を見直す必要があると感じました。これからの人生、残された時間をどう使うべきだろうか…?退院後の約1年間、そう自問し続ける私の心に、「いい仕事がしたい」という想いが芽生えていました。そんな考えが浮かんだのは、ちょうど子どもが生まれるタイミングと重なったこともあるでしょう。過去の私は、売上や収入など、目に見えるものだけが仕事における成功だと信じてきました。当時は私だけでなく、社会全体にそのような雰囲気があったのです。これからは、「人に喜ばれること」を仕事選びの軸にしたい。そしてもう一つ、仲間と高い目標に向かって、喜びを分かち合えるような仕事がしたいと思ったのです。営業時代の私は、常に周囲と競争していました。個人プレーである以上、誰もが仲間というよりライバルなのです。「おめでとう!」…と相手の成果を称えながら、瞳の奥が笑っていないあの感じ…(笑)。それって、お互いに不幸だと思うのです。そのような原体験があったので、仲間と成果を分かち合い、思わずハイタッチしてしまうような清々しい関係を強く望んでいました。

業界未経験で学習塾のフランチャイズに加盟するも、3ヵ月で脱退!

実は過去にも仲間と起業した経験があり、再び自分でビジネスを始めたいと思っていました。最初に検討したのは、「ココイチ」のフランチャイズオーナーになること。理由は、ココイチのカレーが好きだったからです。その当時、私が住んでいた湘南地区には店舗がなく、わざわざ相模原まで食べに出かけていました。このカレーなら、多店舗拡大への可能性が十分にあると感じたのです。ところが、実際の説明会に参加してみると、本部がフランチャイズオーナーに求める店舗展開のスタイルが、残念ながら私の理想とは異なっていました。そのタイミングで舞い込んできたのが、関東に初進出する学習塾のフランチャイズ経営の話だったのです。私の学歴は高卒ですし、塾業界の経験もありません。強いて言うなら子どもは好き。また、生徒を集める営業力には自信がありました。そこで、経営については本部のサポートが得られる、学習塾のフランチャイズに加盟することにしたのです。ところが…3ヵ月後にはフランチャイズを脱退することになります。なぜなら、いざ始めてみたら関東圏における塾の経営には本部にもノウハウが一切なく、加盟を続ける意味がないと判断したからです。

「創英ゼミナール」の意外な誕生ストーリー。

平塚に校舎を構えてしまったし、塾の経営についてはド素人のまま…。ひとまず前に進まなければなりません。そこで私は、既に地元で塾を経営している先輩を知人からご紹介いただき、教えを乞うことにしました。後に私のビジネスパートナーとなるその人は当時、大学関係の仕事を持ちつつ、2校舎を展開していました。私はまったくの見切り発車で塾を始めた経緯を、初対面から相手に曝け出しました。そんな私を面白い奴だと思ったのでしょう。あるいは、集客力の強さをアピールする私に、少なからず可能性を感じたのかもしれません。彼と出逢った翌月には、3校舎の共同経営が始まったのです。実は「創英ゼミナール」という名前は、当時のビジネスパートナーが経営していた塾の名前をそのまま引き継いだものでした。新たな名前を社内で募集したり、看板リニューアルの見積もりを取ったりした時期もありましたが、結局は変更しないまま、今日に至ってしまいました(笑)。

こんなことさえ知らなかった…!?創業当初の恥ずかしい失敗談。

創業当初はあまりに無知だったせいで、恥ずかしい失敗もたくさん経験しました。たとえば、新校舎をオープンする際のこと。私は得意の営業力でお母さんたちを口説きまくり、生徒の獲得に成功しました。そして、大学生を講師に招き、満を持して開校の日を迎えたのです。ところが…せっかく集めた生徒たちが、入塾したその月から続々と辞めていきました。その理由は、経営者の私に「テスト範囲」の概念がなかったせいで、律儀にテキストの1ページ目から教えていたのです(笑)。今となっては笑い話ですが、当初は自分の素人ぶりに反省の絶えない日々でした。

約1年間、ビジネスパートナーとは毎晩のように議論(…というよりはケンカ)をしながら、一緒に事業を軌道に乗せていきました。互いに性格や強みが違ったからこそ、うまく補完し合えたのかもしれません。4校舎目の新規開校を迎えた頃、パートナーが本業に専念することになりました。私は彼から元祖「創英ゼミナール」の2校舎を買い取り、さらなる事業展開を進めていきました。

株式会社創英コーポレーション 代表取締役 豊川 忠紀さん一般的な「個別指導」とは一線を画す、独自のスタイルを確立する。

創業当初は県立高校の入試問題さえ解けなかった私ですが、2~3年目には自ら教壇に立ち、校舎の責任者を担っていました。事業拡大に際し、経営者として現場の視点を持っておくべきだと考えたからです。ちなみに個別指導の形式は、創業当初より採用してきました。講師1名に対して生徒4名までという創英ゼミナールの基本スタイルは、生徒の学習効果を高めるうえで最適化された形です。一般的に1対1の個別指導が学力向上には効果的だと考える方が多いでしょう(実際にそう考える保護者の方々が大半)。しかし…興味深いことに、事実はまったく異なるのです。

そもそも学習塾の役割は、生徒に「教えること(ティーチング)」ではありません。彼らが自力で問題を解決できるよう、「導くこと(コーチング)」が本質的な価値のはずです。実は1対1の個別指導では、講師自身の満足感は得やすくなります。なぜなら一人の生徒に付きっきりで指導するため、「教え切った」という実感が得られるからです。しかし、講師の満足度とは裏腹に、それで生徒の成績が上がることは基本的にはありません。なぜなら1対1という構造上、講師が教え過ぎてしまい、生徒に甘えが生じやすいからです。その点、1対4の割合は、実に絶妙なバランスなのです。講師は一人の生徒だけに教えることが許されないため、生徒の「自分で考える機会」を奪ってしまうことがないのです。現場で試行錯誤を重ねた結果、ようやく辿り着いたベストな指導方式がこれでした。このスタイルで結果を出し続けたからこそ、私たちは他社との差別化が図れたのです。もちろん経営効率だけを考えれば、集団指導を採用した方が合理的でしょう。しかし、集団指導のもとで学習効果を上げるのは、成績の上位層にいる子どもたちだけです。彼らはいわゆる進学塾に行って十分にやっていけます。私たちの存在意義は、より細やかなサポートを必要とする生徒たちのためにあるのです。もちろん、1対4のスタイルだけが成功の要因ではありません。生徒の自発性を効果的に引き出し、自力で答えに辿り着いたという成功体験を通じて、子どもの中に自信を育ませる。このような思想を基に設計された「戦略的コミュニケーション」こそ、私たちの独自性であり、結果を出してきたノウハウでもあるのです。

脱Only受験!「生徒を難関校に送り込むだけの塾」にはならない。

子どもたちには成長の過程で、自力で登るべき階段があります。ところが、大人が先回りして登り方を教えたり、ときには階段そのものを取り除いてしまったり…。我が子を思う親の気持ちとしては、確かに理解できる部分はあります。しかし、それは皮肉なことに、将来的に子どもたちを不幸にしかねない関わり方なのです。たとえば昨今、非常に多くの大学生が卒業後の進路に迷っています。自分がいったい何をしたいのか、彼らは自分でも判らないのです。なかには進路を決めるうえで、まるで占い同様の自己分析に頼ったり、他人に自己PR文を書いてもらったりする学生もいます。どこまで自分の意志がないのか…。そう呆れそうになる一方で、決して彼らが悪いわけではないと私は思うのです。そのような学生たちは、いわゆる努力が出来る子ですし、成績だって優秀です。勉強や習い事など、大人から与えられた課題を、幼い頃から真面目にクリアしてきたのです。しかし、彼らは自ら問いを立てたり、自分の意志で物事を選択したり…いわゆる内発的な動機によって行動した経験が極端に不足しています。大人たちの関わり方や周囲を取り巻くビジネスが、彼らを骨抜きにしてきたとも言えます。「過去問をください!」「傾向と対策を教えてください!」…もちろん学習塾である以上、我々も生徒の要望には応えます。 しかし、私たちが目指すゴールは、彼らを志望校に合格させることだけではありません。受験という人生のイベントを活かして、いかに物事に対して、自分なりの動機を見出す機会を与えられるか、いかに自立へと導くような関わりが出来るか。進路相談や授業において、これが最大のテーマだと思っています。なぜなら、いずれ大人になれば、彼らは社会にたった一人で放り出されるからです。それまで大人の言うことに従順に生きていても、社会に出た瞬間から、「自分で考えなさい!」と突き放されるのが現実です。その時になって戸惑うなんて、あまりに不憫でしょう。だからこそ、早いうちから何事にも自分なりの動機を見つけ、考え、選択できる習慣を身につけるべきなのです。言われるままに机に向かうのではなく、勉強すること、進学することの意味を自分なりに考え、定義できることが大切です。自ら納得して物事を選ぶ習慣や、努力によって道を切り拓いた経験は、生徒のその後の人生において自信になるはずです。受験を通じて、自分のなかに何を培うことができたのか…?それこそが、目の前の「合格」よりも大事な財産になると思っています。

これからの学習塾に求められる価値とは…?

創英ゼミナールでは講師に対して、いわゆる「完璧な授業」を求めてはいません。そもそも講師の「素晴らしい解説」など、ほとんど価値にならない時代なのです。その証拠に、高校生を対象とした学習塾のマーケットは今、約6割が対面の授業からICTコンテンツの配信へと置き換わっています。デジタル化が進んだ現代において、「素晴らしい解説」は一握りのスター講師がいれば事足りるのです。一方で、すべての塾がデジタルに置き換わるのかと言えば、そんなこともありません。多くの大人がコロナ禍のリモートワークで怠けてしまったように、子どもが自分の意志だけで計画通りに勉強したり、モチベーションを維持したりするのは難しいことです。塾に行けば勉強する気になる、先生が悩みを聞いてくれる、褒めてくれる、励ましてくれる、一緒に計画を立ててくれる、共に学ぶ仲間がいる…。このように、コミュニティや居場所としての価値を高めることが、これからの塾に求められる大切な要素だと思います。子どもにとって、大人から承認される体験は、私たちが思う以上に自信に繋がるものです。かつての私がバイト先の先輩に褒められただけで、舞い上がってしまったように…!そして本来、子どもがやる気になったときには、大人が教えることなどほとんどないのです。あなたが幼い頃に夢中になったことを、ぜひ思い出してみてください。時を忘れるほどの集中力を発揮したし、新たな知識だってスポンジのように吸収できたはずです。だからこそ、私たちは親や学校の先生に次ぐ「第三の大人」として、子どもたちを承認し、動機付けをすることで、彼らを支える存在になりたいのです。講師にそれができるのなら、もはや完璧な授業をすることより、よほど価値があるはずです。

株式会社創英コーポレーション 代表取締役 豊川 忠紀さん夢見る力と大きな感動を!経営理念を体現する大人たちでありたい。

仲間と力を合わせて高い目標にチャレンジしよう!…私たちは創業当初から、この言葉を常に体現してきました。目標を掲げた時点では、達成するための十分な条件など揃ってはいません。周囲からは無理だと笑われましたし、本当に実現できるかどうかは、最初は自分たちさえ半信半疑でした。しかし、一度でも達成の喜びを知ってしまうと、組織全体が自動的に「できる!」モードに入っていきます。最初は社長の私が旗を掲げ、社員たちを鼓舞していました。ところが、いつしか社員たち自らが高い目標に挑むようになり、社長の私が尻を叩かれる立場になったのです(笑)。やると決めたからにはハラハラドキドキ、皆で泥んこになって達成を目指します。そんな調子で私たちは、平均130%の成長を続けてきました。売上利益や事業展開について、もちろん今後の経営計画はあります。一方で、このワクワク前進していく空気そのものに、私たちの原動力があるのです。だからこそ、共に働く仲間が、目の前の仕事に誇りや楽しみ、やり甲斐など、自分なりの価値を感じて取り組めているかどうかを、私は非常に重視しています。企業としては社会的責任がありますから、事業を成長させることはもちろん必須です。一方で、社員にとっての仕事の価値を高めることも、私が同じくらい大切にしたい軸なのです。当社には、グループ会社を含めて9つの教育ビジネスがあります。それらを立ち上げた理由は、売上利益を拡大するためではありません。「新規事業にチャレンジしたい」「社長になりたい」「マネージャーになりたい」など、社員の声を形にしたい、彼らがもっと活躍できるフィールドを創りたいと思ったからです。「ボーナスが増えた」「年収が上がった」など、経済的な報酬が得られることは、働くうえで重要なことです。一方で仕事には、「ワクワクする」「成長を実感できる」「やり甲斐がある」など、お金には代えられない報酬も確実に存在しています。ただし、同じことを繰り返すなかでは、その種の喜びが生まれにくいことも事実です。だからこそ、社内の新規事業に携わることで、一人でも多くの社員が充実した日々を実感できるのなら嬉しく思います。基本的に教育に携わる大人の多くは、子どもたちに「夢を持ってほしい」「成長してほしい」「輝く未来を手にしてほしい」と願っているものです。一方で、子どもたちにはそれを問うのに、自分たちはどうでしょうか。まずは私たち大人が、子ども以上に勉強や努力をすること、仕事を通じて自己実現をすること、「大人って楽しいよ!」と、胸を張って言えるようになること…。子どもと対峙する立場にあればこそ、それは重要なことだと思うのです。夢見る力と大きな感動を…これは私たちが掲げる経営理念です。まずは私たち自身が、この理念を誰よりも実現している大人でありたい。もちろん、人間ですからサボりたい日もあるでしょう。思わず辞めたくなるような失敗やトラブルだって起こります。社長の私にも、会議に行きたくない日くらいあるものです(笑)。でも、基本的には前向きに仕事に取り組み、少しでも夢中になれる瞬間や、ワクワクする気持ちがあれば、それはもう万歳なのです。かつては数人だった当社の組織も、今では頼もしいリーダー陣が育っています。しょうもない文句を垂れていたメンバーが、今や後輩を立派に指導している姿を見ると、思わず後ろからド突きたくなるほど嬉しいものです。人の成長は素晴らしいものですね。「この会社で仕事ができて良かった」…社員がそう感じられる機会を増やせるよう、今後も頑張っていきたいと思います。

 

◆ 編集後記 ◆

先日、海へ行こうと逗子駅前に降り立つと、「創英ゼミナール(逗子校)」の文字が視界に飛び込んできた。約20年前、まったくの素人から学習塾の経営を始めたという豊川社長。時を経て、創英ゼミナールは神奈川エリアを席巻し、今では誰もが知る学習塾ブランドへと成長を遂げた。さて、取材に伺ったのは横浜ランドマークタワー42階、株式会社創英コーポレーションの本社である。我々がオフィスに通されると、なんと社員の方々が業務を一斉に停め、全員起立でご挨拶をされた。その背景には、「夢見る力と大きな感動を」…と、大きな文字で経営理念が掲げられている。過去にも多くの企業を訪問してきたが、こんなにも壮観なシーンには初めて遭遇した。人に会ったら大きな声で挨拶をしなさい!…子どもの頃には誰もがきっと言われたことだろう。しかし、果たしてどれだけの大人が実践できているだろうか…?その点、さすがは教育業界で注目されている成長企業である。声の揃った清々しい挨拶に、思わず感動してしまった。

さて、豊川社長の第一印象は、よく日焼けして、よく笑う人!いかにも子どもに好かれそうな雰囲気をお持ちの方である。ご自身の経歴については多くを語らないが、子どもの教育や社員の育成へと話題が移ると、やはり急激に熱が入る。取材を通して見えてきたのは、創英ゼミナールが学習塾の激戦区において、生徒や保護者から圧倒的な支持を集めてきた真の理由である。対外的には、「完全個別指導」「志望校合格率90%超」など、学習塾として一目でわかる強みや実績を公表している。しかし、彼らが特に発信していないところに、この塾の真の価値があるように感じた。それは、彼らの教育方針の根底にある哲学に近いものだ。目の前の子どもたちの可能性を信じ、「導くこと(コーチング)」に重点を置いたコミュニケーション。生徒の「志望校合格」の先を見据え、彼らの人間形成にさえ関わりを持とうとするスタンス。それこそが、他の塾との差別化ポイントではないだろうか。子どもたちは、きっと感覚的にわかるのだろう。彼らにとって、塾が行きたくなる場所であり、逢いたくなる大人がいる場所になっているのだ。目には見えないところに、人や企業の真価がある。そんなことに気づかされた貴重な取材となった。

取材:四分一 武 / 文:アラミホ

メールマガジン配信日: 2023年12月4日